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淫行条例(恋愛規制条例)を考える

淫行条例とは、児童福祉法の拡大解釈とは

いわゆる淫行条例(いんこうじょうれい)とは、日本全国の地方公共団体のうち、都道府県・一部の市の青少年(健全育成)条例などに制定されている、淫行処罰規定(いんこうしょばつきてい)の通称です。

青少年(健全育成)条例などの正式名称は都道府県・市により異なりますが、「淫行条例」の部分の内容はほぼ同じで、18歳未満の人との性行為や、18歳未満の人による性行為を原則禁止するものです。

正式名称が「淫行条例」という条例はなく、あくまでも青少年条例に含まれている規定の通称です。

その一例として、下記の条文があげられます。

「淫行条例」の一例

東京都青少年の健全な育成に関する条例
第十八条の六 何人も、青少年とみだらな性交又は性交類似行為を行つてはならない。

 

青少年や児童とは、ここでは(満(他も同様))18歳未満、つまり17歳以下(0歳から17歳まで)のことであり、18歳は含みません。

0歳から17歳といっても、16歳未満の人との性行為は刑法で禁止されているため(13歳~15歳については例外あり)、淫行条例の問題や論点は、13歳から17歳、特に16歳・17歳の場合に限られます

淫行条例は、建前上、「婚約など、真摯な恋愛関係にある場合は『淫行』ではなく、違法とはならない」とされていますが、本人同士に恋愛感情があっても、必ずしも真摯な恋愛関係と認められるとは限りません。淫行条例が恋愛規制条例と呼ばれる理由は、そこにあります。

もちろん恋愛が性的な関係を含むとは限りません。プラトニックな恋愛も一つのあり方です。しかし、恋愛感情が性的な関係に発展することはあり得ます。その意味で、恋愛の自由には、恋愛についての方法の自由も含まれます。

また、国の児童福祉法にも似た規定があります。

児童福祉法

第三十四条 何人も、次に掲げる行為をしてはならない。
六 児童に淫行をさせる行為

 

児童福祉法では、「させる」と書かれており、本来は第三者に対して淫行させる(児童を使って売春をさせるなど)を禁止するための条文でした。それに限られる場合、当ホームページが問題として取り上げるものではありません。しかし現在では「(影響力を及ぼし)自分を相手などとして淫行『させる』」という拡大解釈により、淫行条例とほとんど同じように適用されることもあります。

判例上は「影響力を及ぼし」とされており、通常は、たとえば教師と生徒の間など職業などの属性・関係性がある場合や、家出中の児童を家に泊めて支配下に置く場合などに限られ、淫行条例に比べて適用されるケースは限定されます。しかしその範囲は不明確であり、上記のような事例でなければ適用されないとは断言できません。

なお、強制する行為の有無に関わらず、職業や社会的立場などといった属性やそれによる関係性を理由に機械的に規制の対象とすることに関しては、議論があります。

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